警視庁鉄道捜査隊東京駅分駐所に所属する鉄道捜査官・花村乃里子(沢口靖子)は、ある日、東京駅構内をパトロール中、女の叫び声を耳にする。駆けつけてみると、若い女性が二人組の男にバッグを引ったくられようとしている。バッグを奪い二人組が逃げようとした時、女連れの中年の男が足払いを掛けて一人を転倒させた。慌てた二人組は、バッグを放り出すと人ごみにまぎれて逃げ去ってしまう。
被害に遭ったのは小林みどり(川合千春)というモデルで、足払いを掛けたのは金融会社社長の青柳恒夫(団時朗)、連れの女性はモデルクラブの経営者・柏木麗子(藤田憲子)だった。あまり仕事がないというみどりに、うちにこないかと麗子が誘い、青柳もそれを勧めたのだった。
それから数ヵ月後、青柳が名古屋駅近くのホテルで殺される。乃里子は新聞でこの事件を知ったが、まさか自分に関わってくるとはその時は夢にも思わなかった。
数日後、東京駅分駐所に久我達也(野村祐人)という若い捜査官が転属してくる。その久我が乃里子の上司の倉田(地井武男)や乃里子たちに挨拶をしているところに、愛知県警の真田(山村紅葉)、宮川(井上康)という二人の刑事が訪ねてくる。
青柳殺害の容疑者が浮かんだのだが、その人物は青柳が殺害されたと思われる時刻に久我と一緒にいたとアリバイを主張しているというのだ。
その容疑者は、大手商事会社の重役秘書・若宮夕子(遠野凪子)で、青柳が殺される一ヵ月ほど前に激しく口論しているのを目撃されていたという。
久我は、若宮夕子という名前をはっきりと記憶していた。青柳が殺される前日、一人旅をしていた久我は諏訪湖で、やはり一人旅の夕子と知り合い、翌早朝、意気投合した二人は長野県辰野駅から飯田線に乗って終着の愛知県豊橋駅まで一緒にいたというのだ。これにより、青柳が殺された時刻に、夕子は久我とともに飯田線の車中だったことが証明された。ところが、久我によると、車中は二人だけではなかった。前夜、夕子は小林みどりという友人と出会い、その彼女も一緒だったというのだ。ただ、みどりは眠いからと別の車両に移り、豊橋近くで戻ってきたという。久我の話から、乃里子は、数ヶ月前の東京駅での引ったくりの被害者も小林みどりだったことを思い出した。
乃里子は、久我が夕子とみどりにアリバイを証明するために利用されたのではないかと推察するが…。