骨壷を抱く二人の女

藤田朋子 古尾谷雅人 江守徹 鈴木瑞穂 小柳ルミ子

  東京・高輪で秋葉産業社長の秋葉茂一・さね夫妻が自宅の金庫から5百万円を奪われ、殺された。その時間、秋葉家から飛び出してきたのを目撃されたのは古沢克彦。克彦の家から5百万円と血のついたワイシャツも出てきたため、警察、マスコミとも克彦を犯人とほぼ断定する。しかし克彦は無実を訴え、事件当日は殺された秋葉茂一の娘婿で新社長になった秋葉雅文に会うために秋葉邸を訪れたこと、秋葉雅文とは元同僚の井元という男にバーで紹介されて知り合ったこと、自分の部屋から出た5百万円は秋葉産業への入社支度金として秋葉雅文から出たものだと言われ「井元」から受け取ったのだと証言する。だが、秋葉はその話を否定し「井元」という男も知らないと言う。警察の調べでも「井元」という名の男の存在は認められなかったため、克彦の作り話だとして片付けられた。
 克彦には、たった一人の肉親である妹・秀美がいた。秀美は克彦の無実を堅く信じていたが、世間には克彦の名が容疑者として公表され、秀美もマスコミの取材攻勢の的となった。秀美は婚約者からも婚約解消を言い渡される。

 克彦と秋葉を繋ぐ「井元」の存在が見つからないことや多数の状況証拠から克彦は強盗殺人罪で起訴される。第一回公判が終わった後、拘置所に面会に行った秀美に克彦は「俺の人生に悔いはない」と言い、その直後首吊り自殺をする。秀美は兄を自殺に追い込んだマスコミへの恨みを募らせる。そして克彦が好きだった九谷焼の水差に遺骨を入れ、自分が兄の無実を証明しようと誓うのだった。
 秀美は克彦の言っていた「井元」が誰なのかを探しに、克彦が以前勤めていた会社へ向うが、営業所にも工場にも、また退職者の中にもそのような名の男はいなかった。しかしそこで克彦が金沢の加賀温泉駅で女性と密会していたという情報を得る。秀美は克彦が九谷焼の水差しを大切にしていたことを思い出し、それが加賀温泉駅での密会と何か関係があるのではと直感する。そして水差しの箱の裏に書いてある「葛原工房」の「葛原彩子」という名を頼りに、加賀へと旅立つ。 葛原工房を訪ねた秀美は葛原彩子に会う。葛原彩子は克彦と同郷で昔からの知り合いだった。今は年の離れた夫と共に陶芸家として活躍しており、3歳になる娘がいた。彩子は作業中ながら心よく秀美の話を聞く。しかし克彦とは4年前に偶然再会したが、それ以来会っていないと言い、恋愛関係を否定する。また彩子は「井元」という名に反応をしながらも知らないと言う。
 葛原彩子に肩透かしをくらわされた秀美は東京に戻り、克彦の残したマッチを頼りにスナック「バガボンド」へ向かう。そこで秀美は「井元」らしき男性の存在を突き止める。
 兄を取り巻く人間の中にきっと真犯人がいる…秀美は兄の無実を晴らすため、真相解明に挑む。真犯人探しにはベテラン刑事の塩島、新聞記者の和田、弁護士の瀬能も絡み…。

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