蔵前の銭湯『草の湯』を中傷するビラが撒かれて程なく、その主人・工藤一哉(太川陽介)の刺死体が荒川の河川敷で見つかった。工藤は、妻・典子(東ちづる)、6歳になる一人息子の良太(佐野観世)と三人暮らし。『草の湯』は工藤が先代の父親から継いだのだが、実際は典子が切り盛りしていた。銭湯の仕事が嫌いだった工藤は、結婚後、単身甲府に行って会社を興したが失敗し、父親の死をきっかけに東京に戻ってきていた。
警察は、工藤とトラブルを起こし中傷ビラを撒いた可能性が高いボイラー業者の高山寅男(山本龍二)を調べるが事件とは繋がらない。銭湯組合の会議で典子と仲良くなった『富士の湯』の女将・宝田香代子(泉ピン子)は、少しでも手助けをしてあげようと考えて良太を預かった。
まもなく、店の前で遊んでいた良太の姿が急に見えなくなった。香代子、その夫・恭介(森本レオ)、義妹の舞子(熊谷真実)らが慌てて探し回る中、良太を連れて戻ってきたのは、近くのウイークリーマンションに住んでいる中川紀美子(末來貴子)という女。紀美子と典子との間の奇妙な空気を感じ取った警察は、その周辺捜査に乗り出した。良太がいなくなった夜、工藤が紀美子のマンション近くにいたとの目撃証言もあったのだ。
この紀美子の指紋から思わぬ事実が明らかになった。紀美子は、7年前、勤務していた甲府の信用金庫から5000万円を横領し逮捕されていた。警察の取調べに対し、紀美子は、勤め先から横領した金を全て遊興費に使ったと供述。だが、警察は、紀美子が当時付き合っていた愛人の工藤に全てを貢いだとにらんだ。その時、妊娠していた紀美子は、警察署内で出産し、昨年出所していた。警察は、紀美子が頼みの綱の工藤に冷たくされて犯行に及んだと見て、更なる捜査を続けた。
そんな中、赤信号で横断歩道に飛び出した紀美子がトラックにはねられ、意識不明の重態となった。紀美子への容疑を強めていた警察は、事件が被疑者不特定のまま終了することを危惧する。
ところが、服役中に施設に引き取られた紀美子の子供が、子供の出来ない夫婦にもらわれ、その際、夫の意向が強く働いていたことが判明。これを知った香代子は、泥だらけの良太の靴下をこれでもかというほど真っ白になるまで洗濯していた紀美子のことを思い出した。そして、紀美子が、真犯人の正体を知りつつも、良太のために自らトラックに飛び込んだと気付いて−。